そのAIチラシ、ちょっともったいない!便利な時代だからこそ大切にしたい最後の確認

お刺身に、謎の網目模様が……?

先日、いつもランチで利用している飲食店で、ちょっと気になる張り紙を見かけました。

お刺身などの料理が載った、おいしそうな広告です。

ところが、よく見てみると……。

「あれ? お刺身に網目模様が入ってる?」

魚の身の表面に、何やら不自然な模様があるのです。

一見するとおいしそうな料理の画像なのですが、よく見ると何とも不自然。

正直、ちょっと気持ち悪いなと思ってしまいました。

ちなみに、私の妻はこうした集合体のような模様が苦手で、見るだけでも不快に感じることがあります。

もちろん、すべての人が同じように感じるわけではありません。

ただ、飲食店の広告として考えると、これは少しもったいないことではないでしょうか。

本来、料理の広告は「おいしそう!食べたい!」と思ってもらうためのもの。

それなのに、画像の不自然さが気になってしまったり、人によっては不快感を覚えてしまったりする。

お客様に食べたいと思ってもらうための広告が、逆効果になってしまう。

そんなことも起こり得るわけです。

【閲覧注意:実際のお刺身部分を拡大した写真】

なお、この画像が生成AIで制作されたものかどうかは確認できていません。撮影や印刷による影響の可能性もあります。

ただ、今回の出来事をきっかけに、最近よく見かけるようになったAIで制作されたチラシについて、少し考えてみました。

「いらすとや」から生成AIへ。チラシ制作も変わりました

少し前まで、街中のチラシやポスター、自治体のお知らせなどで、よく見かけたのが「いらすとや」のイラストでした。

親しみやすく、さまざまな場面に使えるイラストが豊富に用意されていて、私自身も便利なサービスだと思っています。

ところが最近は、生成AIで制作されたと思われる画像やチラシを見かける機会が増えました。

以前なら、チラシを作るためには、デザインソフトを使いこなしたり、デザイナーに制作を依頼したりする必要がありました。

しかし今は、AIに「こんなチラシを作って」とお願いするだけで、短時間でそれらしいデザインが出来上がります。

しかも、最近の画像生成AIは本当に優秀です。

写真のような画像はもちろん、イラストやポスター、バナーなども、驚くほど簡単に作れるようになりました。

私自身も、仕事やブログのアイキャッチ画像制作などで、日常的に生成AIを活用しています。

専門的なデザインの知識がなくても、誰でも手軽に制作できるようになったことは、とても素晴らしい進歩だと思います。

特に、デザインに大きな予算をかけられない小規模な事業者にとっては、ありがたい技術ですよね。

ただ、手軽に作れるようになったからこそ、少し気をつけたいことがあります。

AIで作った画像、よく見るとおかしなところがありませんか?

画像生成AIは、見栄えの良い画像を作ることが得意です。

しかし、細かい部分まで正確に再現できるとは限りません。

例えば、料理の画像なら、食材の形がおかしかったり、不自然な模様が入っていたり。

人物の画像なら、手や指の形が不自然だったり、背景の物体が妙な形になっていたり。

最近はこうした問題もずいぶん改善されてきましたが、まだ完全ではありません。

そして、もうひとつ気になるのが文字です。

日本語の生成精度も向上していますが、漢字の一部がおかしかったり、似たような別の文字になっていたりすることがあります。

実はこれ、つい先日、弊社でも経験しました。

実は、弊社のブログでも同じようなことがありました(笑)

ひとつ前に公開したブログ記事「その立派な名刺、メールアドレスがGmailなのはちょっともったいない。」のアイキャッチ画像も、生成AIを使って制作しました。

名刺が写っている画像なのですが、そこには「代表取締役」という肩書を入れていました。

ところが、出来上がった画像をよく見ると……。

「代表取締役」の「締」という漢字がおかしいのです。

そこで、AIに修正をお願いしました。

しかし、何度修正しても、なかなか正しい漢字になりません。

修正したつもりが、別の部分までおかしくなることもありました。

結局、何度か試した末に、役職の表記そのものを削除することにしました(笑)。

弊社のブログ用に生成した画像。何度修正しても「締」の漢字が正しく表示されませんでした。

ここで大切なのは、私自身がその間違いに気づいたということです。

もし、生成された画像をよく確認せず、そのまま公開していたらどうでしょうか。

おかしな漢字が入った画像を、自社のブログに掲載していたかもしれません。

これって、冒頭のお刺身の話と似ていると思うんです。

AIが間違えることよりも、その間違いに気づかず、完成品として公開してしまうことが問題なのではないでしょうか。

画面ではきれいなのに、印刷すると残念な仕上がりに

もうひとつ、AIで作られたチラシを見ていて気になるのが、印刷品質です。

AIで作ったチラシは、パソコンやスマートフォンの画面では、とてもきれいに見えることがあります。

しかし、それをそのまま印刷すると、文字がぼやけたり、細かな部分がつぶれたりすることがあります。

これは、モニタやスマホ画面で表示する画像と、印刷に適したデータが必ずしも同じではないためです。

一般的な印刷物では、原寸サイズで300〜350dpi程度の画像解像度が目安とされることが多くあります。

例えば、A4サイズのチラシを300dpiで印刷するなら、画像はおおよそ2,480×3,508ピクセルが必要になります。

もちろん、内容や印刷方式によって必要な解像度は異なりますが、AIで生成した画像が必ずしもこの条件を満たしているとは限りません。

また、AIが画像の中に文字まで描き込んでいる場合、文字も画像の一部になってしまいます。

そのため、文字だけをきれいに修正したり、印刷用に調整したりすることが難しくなります。

本来、印刷には印刷用のデータが必要です

少し専門的な話になりますが、印刷会社にチラシを依頼するときには、印刷に適したデータを用意する必要があります。

例えば、Illustratorなどで制作したデータでは、文字を「アウトライン化」することがあります。

これは、文字を図形に変換することで、印刷する環境によってフォントが変わってしまうことを防ぐ処理です。

また、画像の解像度や色の設定、紙を裁断するときに必要な「塗り足し」なども確認します。

ただし、最近はフォントを埋め込んだPDFなど、アウトライン化が不要な入稿方法もあります。

大切なのは、印刷会社が指定する形式に合わせて、適切なデータを用意することです。

AIでチラシの画像が完成したことと、印刷用のデータが完成したことは、必ずしも同じではないのです。

例えば、AIでデザイン案や背景画像を作り、文字はCanvaやIllustratorなどで配置する。

そして、印刷会社の入稿仕様に合わせてデータを書き出す。

こうしたひと手間を加えることで、仕上がりの品質を高めることができます。

AIで作ったものを公開する前に、確認してほしいこと

では、AIでチラシや広告を制作した場合、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

特に確認しておきたいのは、次の5つです。

① 写真やイラストに不自然な部分がないか

人物の手や指、料理の食材、背景の建物や小物など、細かい部分まで確認しましょう。

② 文字に間違いがないか

特に漢字や小さな文字は要注意です。見た目が似ていても、正しい文字とは限りません。

③ 金額や日時、連絡先が正しいか

価格、営業時間、電話番号、イベント開催日時などは、必ず元の情報と照らし合わせて確認しましょう。

④ 実際の商品やサービスと違いすぎないか

例えば飲食店の場合、AIで生成した料理の画像が、実際に提供する料理と大きく異なっていないか確認が必要です。

実際の商品より著しく良く見せるような広告は、お客様に誤解を与えるだけでなく、景品表示法上の問題につながる可能性もあります。

⑤ 印刷に適したデータになっているか

チラシやポスターとして印刷する場合は、画像の解像度や文字の鮮明さ、入稿形式なども確認しましょう。

そして、もうひとつ。

私は、これが一番大切だと思っています。

「自分が作ったもの」という目線ではなく、「お客様が見るもの」という目線で、もう一度確認すること。

制作していると、どうしても全体のデザインや見栄えに意識が向いてしまいがちです。

だからこそ、一度完成したものを、少し時間を置いて見直してみるのもいいかもしれません。

AIで「作れた」と「完成した」は同じではない

AIの進化によって、これまで専門的な知識や技術が必要だったことを、誰でも手軽にできるようになりました。

私は、これはとても素晴らしいことだと思っています。

デザインの経験がない人でも、自分のお店のチラシを作れる。

小さな会社でも、自社のサービスを紹介する画像を手軽に制作できる。

これまで予算や時間の問題で諦めていたことに挑戦できるようになったのは、大きな進歩です。

ただ、忘れてはいけないことがあります。

AIが作ったものに対して、最終的に責任を持つのは、それを利用する私たち自身だということです。

おいしそうに見せるはずの料理写真が、逆に食欲を失わせてしまう。

お店の魅力を伝えるはずのチラシが、文字の間違いや画質の悪さによって、かえって印象を悪くしてしまう。

そんなことになったら、せっかくの努力がもったいないですよね。

今回の話は、何もチラシに限ったことではありません。

AIを使って作った文章や資料、ホームページ、広告など、さまざまな成果物にも同じことが言えると思います。

AIを使うことが目的ではなく、その先にいるお客様に何を伝えたいのか。

そして、実際にそれが正しく伝わるものになっているのか。

そこを忘れずにいたいものです。

「AIで作れた」と「お客様に伝わるものができた」は、同じではありません。

便利になった今だからこそ、最後のひと手間を大切にしたいですね。

……と、AIと一緒にこの記事を書きながら、改めて自分自身にも言い聞かせています(笑)。

投稿者プロフィール

野末 泰裕
株式会社エンツナクリエイト 代表取締役
三重県津市出身 名古屋在住
大阪音楽大学短期大学部音楽専攻ジャズコース卒業
WACA公認ウェブ解析士
DX推進アドバイザー
IT導入診断士
Mie WordPress Meetup 共同オーガナイザー
Zoho Japan Community Ambassador