AI営業のリアル。弊社が“外壁塗装会社”にされた話 〜効率化の裏に潜むAI依存の罠〜

ある日届いた、1通の営業メール

先日、こんな営業メールが届きました。

内容はよくある「経営者インタビューのご依頼」。
ここまでは特に珍しくありません。

ただ、読み進めていくうちに違和感がありました。

「やたら褒めてくれるな…」
「なんか具体的っぽいな…」

そして決定的な一文。

外壁塗装やリフォームを通じてお客様の大切な住まいを守り続けるその力強い歩みに…

……いや、うちはやってません(笑)

実際のメール(一部抜粋)

※個人情報に配慮し一部加工しています

「ご縁を繋ぎ、未来を創る」という社名に込められた想いの通り、
外壁塗装やリフォームを通じてお客様の大切な住まいを守り続ける…

社名から“それっぽく”話を膨らませているのは分かるのですが、
完全に業種を間違えています。

とはいえ、文章自体は自然で、
一見すると「ちゃんとリサーチしている風」に見える。

ここに、少し怖さを感じました。

実は去年も同じ会社から連絡が来ていた

さらに調べてみると、
同じ媒体から2025年にも問い合わせが来ていました。

その時は、問い合わせフォームからの営業。

内容もシンプルで、

  • テンプレではあるが破綻はない
  • 業種の誤認もない

いわゆる“よくある営業”でした。

1年で何が変わったのか?

今回と昨年を比較すると、明らかに違います。

項目2025年2026年
送信方法フォーム営業メール直送
文章テンプレAI生成っぽい
精度正しい業種ミスあり

つまり、

営業の「自動化」が進んでいる

メールヘッダーを見てみた

気になったので、メールヘッダーも確認してみました

すると、

  • Gmail API(HTTP経由)で送信
  • Bccによる一斉送信
  • SPF/DKIMも正常(正規の企業)

つまりこれは

スパムではなく、正規企業による“自動営業”

AI営業の裏側(推測)

今回の流れは、おそらくこうです。

  1. 企業リストを収集(スクレイピング等)
  2. 企業情報をAIに入力
  3. 営業文を自動生成
  4. Gmail APIで一斉送信

仕組みとしては、非常に合理的です。

なぜAIは、弊社を外壁塗装会社だと思ったのか?

おそらくAIは、社名や断片的な情報から
「地域密着で暮らしを支える会社」と解釈したのでしょう。

そして、その文脈に多く存在する業種である
“リフォーム・外壁塗装”に当てはめた。

AIは理解しているわけではありません。

確率的に「それっぽい答え」を出しているだけです。

だからこそ、

情報が曖昧な企業ほど、AIに“勝手に定義される”

という現象が起きます。

AIは企業のウェブサイトをちゃんと読んでいるのか?

結論から言うと、

多くの場合、ほとんど読んでいません

読めないのではなく、

コスト的に“読ませていない”

のが実態です。

なぜ読まないのか?(コスト構造)

理由はシンプルです。

AIにしっかり企業理解をさせるには、

  • トークンコスト
  • 処理時間
  • システム構築

が必要になります。

これを数百〜数千社に対して行うと、

営業として割に合わない

結果どうなるか。

「多少ズレてもいいから数を打つ」設計になる

問題はAIではなく「運用」

ここが一番重要です。

AIは間違えます。
でも、それ自体は問題ではありません。

問題は、

誰もチェックしていないこと

AI依存という新しい問題

従来の業務は、

  • 人が考え
  • 人が判断し
  • 人が責任を持つ

構造でした。しかしAIを導入した結果、

  • AIが出力し
  • 人が確認せず
  • そのまま実行される

という状態が生まれています。

責任の所在が消えている

これが、AI依存です。

では、どうすればよかったのか?

ここは重要なので具体的に。

もしこの営業を“ちゃんとやる”なら、

最低でも以下は必要です。

① 最低限のチェック工程を入れる

  • 業種だけは人が確認する
  • 1件10秒でもいいから目を通す

これだけで今回のミスは防げる

② AIに与える情報を増やす

  • HPのトップページだけでも読み込ませる
  • 「業種」「サービス」を明示する

精度は一気に上がる

③ スモールスタートで検証する

  • いきなり1000件送らない
  • まず10件でテスト

これ、DXの基本です。

AIは悪くない。設計がすべて

AIは非常に優秀です。でも、

任せる ≠ 丸投げ

設計と運用を間違えると、「それっぽいけどズレている」ものが量産される

まとめ

AI営業はこれから当たり前になります。だからこそ重要なのは、

  • 精度をどう担保するか
  • 誰が責任を持つのか
  • どこまで自動化するのか

という設計です。

効率だけを追いすぎると、信頼を静かに失っていくことになります。

最後に

弊社は外壁塗装はやっていませんが、知り合いの会社さんは紹介できますので必要があればお声がけください(笑)

投稿者プロフィール

野末 泰裕
株式会社エンツナクリエイト 代表取締役
三重県津市出身 名古屋在住
WACA公認ウェブ解析士
DX推進アドバイザー
IT導入診断士
Mie WordPress Meetup 共同オーガナイザー
Zoho Japan Community Ambassador